60周年記念インタビュー 60周年記念インタビュー 代表取締役社長 西岡 利明

ライフスタイルは十人十色。それぞれの空間に調和する水栓の在り方を考え続けています。

創業60周年にあたりまして、経営のお立場から、
これまでの歩みを振り返ってどのように感じておられますか。

私は、三栄水栓製作所が創業50周年を迎えたときに代表取締役社長に就任いたしました。早いもので10年という年月がたち、今年で創業60周年になります。当社は、創業時にはまだ製造拠点がなく、協力先様に製造を依頼して自社商品の開発を行っていました。いわゆるOEMメーカー的な形で始まったわけですが、その後、自分たち自身でものづくりをするために自社で工場を持ち、現在の形になりました。

創業以来の50年間は、本当の意味でのメーカにステップアップしようと先代の社長を含め、皆さんが頑張られた時代でした。お陰様で、先代に代わって私が社長になった時点では、メーカーとしてのスタンスが完璧に出来上がっていましたので、私が考えたのは、これから私どもの水栓に必要なことは一体何かということでした。 私どもが作るのは、生きていくために必要な水を送る栓ですから、そのものづくりは非常に真摯なものでなければなりません。それは大前提ですが、加えて感じていたのは、蛇口というのは金属質で、ともすれば冷たい印象もあるかもしれないけれども、やはり暮らしの空間の中に溶け込むような存在であるべきではないか、ということです。ニーズの多様化が進み、ライフスタイルはますます十人十色になってきています。住まい、インテリアについても住まい手個人の感性が大切にされる時代です。その中で、水栓だけがこれまでと同じようなものでよいのか、と思ったわけです。10年ほど前、私どもの商品は、住まいやホテルの一般室では使っていただいておりましたが、なかなかスウィートルームやペントハウスなどの高級なゾーンでは使っていただけない実情がありました。そうした空間では、海外の製品が選択されるケースが非常に多かったのです。それは、日本の水栓が、デザインの面においてまだまだ発展の途上だったことの現れともいえるでしょう。そのことを意識しながら、私は、この10年間、空間に調和する水栓の在り方を考え続けてきました。

デザイナーの方々とのコラボレーションにも早くから取り組んでおられますね。

ええ。私どもの商品が活躍するシーンは、キッチン、お風呂、洗面所など、人々の暮らしに密着した住空間です。だからこそ、プロダクトデザイナーはもちろん、建築や空間を手掛けるデザイナーといった方にも協力いただいて、新しいことに挑戦しています。もちろん水栓はオブジェではありません。モノとして目立つことが水栓の役割ではないと思います。むしろ、インテリアを構成する素材の一つとして、その空間のコンセプトに調和するようなデザインの選択肢を提供することが必要だと考えています。例えば、自転車が好きで、自転車を中心に住まいを考える人もいます。あるいは海が好きで、海辺に家を建て、海が美しく見えることを望んでおられる場合もあるでしょう。そうしたこだわりの空間にあるのが画一的な蛇口では、不似合と言わざるを得ません。それぞれライフスタイルに合ったものが必要だと思うのです。今後は、例えばですが、時代の空気を敏感に反映するアパレルの分野など、我々にとって全く他業種と考えられるデザイナーの方ともコラボレーションが実現すれば、もっと面白い商品が出来るのではないかと思っています。